消費電力を測るやつを作りました(1)
- 2023/08/15
- 08:14
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連休中は、自由研究の制作に勤しみました。名付けて、大人の自由研究!
作品は、電力を測るやつです。アダルトな研究を想像していた人にはごめんなさい。
今回は、作る前の理屈や注意点をくどくどと述べます。
さて、電気代の節約に関する記事を書こうと思いつき、部屋にある家電製品の消費電力を測りたくなりました。
世の中には、消費電力を測定する “ワットメーター” なる文明の利器があります。それを買おうかと値段を見たところ……
お中華の怪しいやつでも2,000円。
中国通販のアリエクスプレスも探しましたが、ヨーロッパ向けばかりで、日本 (またはアメリカ) 向けの製品がほとんどありませんでした。
絶対に節電させないぞという電力会社の強い意気込みが感じられますね。
売ってないなら作ります。(なんかカッコいい)
実は、こういうものを買って忘れていました。電圧電流計です。
アリエクスプレスで見つけ、230円くらいで買ったものです。(現在は150円ほど値上がりしています)
計器本体のほか、変流器がついています。黒いドーナツ状のやつが変流器です。(これがカッコいいから買ったのでした)
これらがあれば、家電に入力する電力を知ることができます。原理は後ほど。
電圧電流計につなぐ回路
さっそく、電圧電流計を使う回路の例です。
- 電圧計は回路と並列に
- 変流器は回路に直列に
- 変流器にはコードの心線1本を通す
- 変流器は電流計と必ずつなぐ
電圧電流計は、電圧計と電流計がくっついた計器なので、それぞれの回路を作ります。
電圧計は、コードの2本の心線 (行き帰りそれぞれ電線) の間の電圧を測れるよう、回路と並列につなぎます。
電流計は、コードの心線を流れる電流を図るため、直列につなぎます。
この電流計は変流器がついているタイプですから、変流器を回路に直列につなぎます。(回路図のおしりマークが変流器)
変流器のつなぎ方は、ドーナツの穴にコードの心線1本を通すだけです。
さて、変流器を使う際の注意点です。変流器から出ているコネクターを計器本体に必ず挿して使ってください。
変流器のコネクターをどこにもつながない状態 (開放) で使うと、アホみたいな高電圧が発生したり、変流器が発熱したりします。最悪、壊れるので気をつけましょうね。
このデンジャーな感じがいわばまさに大人の自由研究なんでしょう。
消費電力を測る (ウソ)
タイトルでは “消費電力を測るやつ” と書きましたが、今回のやつでは消費電力は測れません。(景品なんとか法違反ですね)
電圧電流計でわかるのは、回路にかかる電圧と回路に流れ込む (または流れ出る) 電流です。そこから消費電力を知るには、以下の計算が必要となります。
P = V × I × cosθ [W]
ここで、Pは消費電力 (W,ワット)、Vは電圧 (V,ボルト)、Iは電流 (A,アンペア)、cosθは力率です。
なんか難しそうなのがついていますが、家電の力率はメーカーが公開していないので、ここでは “cosθ = 1 (100%)” と仮定し、以下の式を使うと良いでしょう。
P = V × I [W]
よって、表示された電圧 (とりあえず100Vとしてもいいです) に電流をかければ、電力がわかります。
あくまでも、今回のメーターは、家電にかかる電圧と、そこに流れ込む (または流れ出る) 電流を測定しているだけです。この電流には、消費されず (電気代にカウントされず) 帰っていく電流が含まれていることを覚えておいてくださいね。(つまり、家電に書かれた定格消費電力を超える値となる可能性もありますが故障ではありません)
変流器について
ここからは、少し難しい話になります。今回の電圧電流計の特徴である変流器の説明です。(原理がわからないものを他人に勧めるのは気持ち悪いので)
変流器なんかどうでもいいよという人は読み飛ばしてください。
変流器 (Current transformer,CT) というのは、回路を流れる大きな電流を、より小さい電流に変成する機器です。電圧を変える変圧器 (トランス;Transformer) と全く同じしくみですが、電流が対象なので変流器といいます。
変流器も変圧器も、中身はコイルです。コイルには、磁石を近づけたり遠ざけたりすると、電圧 (電位差) が発生するという性質があります (誘導起電力)。中学校でやった電磁誘導というやつですね。電磁誘導は、磁界の変化 (大きさ・方向など) によって起こる現象です。結果、電圧の高い方から、低い方へ電流が流れます (誘導電流)。
さて、電流が流れる電線の周りには磁界が発生しています。小学校でやった電磁石ですね。磁石の代わりに、電磁石をコイルに入れてやると、やはりコイルには電圧が発生し電流が流れます。
ただし、コイルに電磁石を入れるだけではダメで、電流の向きや大きさを変化させる必要があります。交流なら、電流の向きが常に入れ替わるので、磁界の向きも絶えず入れ替わります (交番磁界)。よって、交流の電流が流れている電線を変流器に入れると、変流器のコイルに電流が流れます。
ここで、一次側 (コードの心線) の電流に対し、二次側 (計器側) に流れる電流は、それぞれのコイルの巻き数の比で決まります。一次側の巻き数に対して二次側が多いほど、これに反比例して、流れる電流は小さくなります。
変流器のような環状ソレノイドでは、電線が穴を通過する回数がコイルの巻き数となります。つまり、穴に一度だけ心線を通した回路の一次側の巻き数は1回です。
二次側のコイルの巻き数があらかじめ決まっていれば、比も決まるため、一次側の回路の電流を割り出すことができます。
なぜ、わざわざ変流器を通して測定するかと思いますよね。
それは、回路の電流は大きすぎて測りにくいからです。電気信号などの小電流用を除いて、回路の電流をそのまま測れる電流計はないと思って良いです。
直流回路では変流器が使えないので、電流計 (可動コイル形の電圧計) とシャント抵抗 (分流器;Shunt) を並列に組み合わせて使います。電流計とシャント抵抗は、回路に直列に挿入するため、回路の電線を切断する必要があります。(以前の記事にありましたね)
漏電火災警報器を作動させるための零相変流器。
以前、漏電ブレーカー (漏電遮断器;Earth-leakage circuit breaker,ELCB) のお話をしたときに、零相変流器 (Zero-phase-sequence current transformer) というのが登場しました。零相変流器は、複数本の電線を入れて使う変流器です。同じ回路の行きと帰りのそれぞれの電線を流れる電流の大きさは同じで、方向は逆ですから、両方を接近させると互いの磁界を打ち消し合います。通常時は、そうして磁界がなくなるので、零相変流器に電流は流れません。
が、漏電 (厳密には地絡) があると、行きより帰りが減りますから、磁界が発生し電流が流れます。この電流 (または電圧) を検出し、回路を遮断するのが漏電ブレーカーです。
交流専用のクランプメーター。
私は持っていませんが、電圧や電流を測るマルチテスターのひとつに、クランプメーター (Clamp meter) があります。クランプメーターは、電線を挟む (輪に通す) だけなので、回路を切断せず測定できます。交流用のクランプメーターが、まさに変流器なのです。
なお、直流用のクランプメーターは、ホール効果などほかの原理を使っています。
せっかくなので、オフグリッド・ソーラー発電に変流器を使う場合を考えます。残念ながら、太陽電池や蓄電池の電流は直流なので、変流器による測定はできません。
変流器が使えるのは、インバーターで交流に変換したあとの回路です。さらに、出力の波形が正弦波の場合に限られます。安価なインバーターに多い矩形波の交流は、正しい測定ができません。
……なんだそうです。
ていうか、アリエクスプレスって、こんなマイナーな物も売っているのですね。誰が何に使うのでしょう。
次回は、この理屈をもとに実際に電圧電流計を作ります。
閲覧ありがとうございました。
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